5.意外な関連性から見える化する | バランス分析

技法概要:バランス分析

カレー屋を開店してしばらくすると、客数が落ちてきます。
利益を確保するには、売上を上げる(≒客数を増やす)かコストを下げるしかありません。
どちらを取るべきか? ・・・ 実はこれも同じ根っこであることが多いのです。
コスト削減と売上増大、一見異なる次元に聞こえますが、視点を変えればつながっていることが分かります。

このように、根本的な部分で相互に共通要素があることに着目し、見えないところを見える化する手法が、バランス分析です。

そういえば、少なからぬお客さんが、ニンジンを食べ残しているようです。

バランス分析の例

縦軸計 = 横軸計 の原理を活用

会計の世界では、数百年の昔から、複式簿記と呼ばれる概念が活用されています。
平たくいうと、縦軸と横軸で別々に計算した結果は、最終的に一致するという原理を用いたものです。
※会計的には、売上-費用=利益という視点と、期末資産ー期首資産=利益が一致することを確認するのが複式簿記で、江戸時代の商家でも用いられていました。

同様の発想は、「生産量と材料消費量」「入庫量と出庫量」のように、数えられるもの全般に応用できます。

売上量=材料の量?

カレー屋なら、売上げたカレーの具材の量は、投入した原材料の量とほぼ一致します。「ほぼ」というのは、廃棄されるものがあるからです。
これをざっくりと言ってしまえば、生産量 = 投入原材料総量 + 廃棄量、となります。

予め「チキンカレーは1人前でジャガイモ〇グラム、玉ねぎ△グラム、鶏肉◇グラム・・・」といった構成を把握しておけば、Xカレーが23食、Yカレーが34食、Zカレーが45食・・・使われたジャガイモは総計○kg、タマネギは△kg・・・のように、使った量がわかります。

こうした考え方で、売上から見て材料の量が推定できるのと同様、一定の材料からは(売上構成にもよりますが)いくらの売り上げに期待できるかがある程度推定できます。
このように、異なる視点でも総計が一致する特性を基に、連立方程式のように解を求める技法を、バランス分析といいます。

バランスがとれる例:入庫≒出庫=投入資材≒生産量

バランス分析で、お客さんの好みを知る

カレー屋に限らず、飲食店で重要なのは、客の好みです。
1人1人に聞いてもよいのですが、なかなかまとまりません。
手っ取り早いのは、「何を残したか」から、嫌いなものを推測し、メニューを定期的に入れ替えることです。

例えば、このカレー屋ではニンジンを残すお客さんが多いことが経験上分かっているので、捨てるときに材料別に分類しておきます。そうすると、一定の売上に対して何がどれだけ残されたかが分かります。
この関係性(多くの場合、一次関数になります)を基に、売上予測に対する残された具材(例えば、ニンジン)の仕入れ量を減らせば、仕入コストの削減とともに、お客さんが嫌う要素を減らすことができます。

残された食材の要素を調べた図

材料切れは、死活問題

まとめ:何がバランスするかを先に考え、関連付けておくのがコツ

意識しなければ、売上量とコストの要因である仕入れ材料の量が一致することには気づかないかもしれません。とはいえ、売り上げるために仕入れているわけですから、言われてみれば当然でしょう。

こうした「○の合計と△の合計が一致する」の関係性を見いだせれば、「コストを削減すべき要因を売上から見つける」ようなことが可能です。