最初の一歩は問題の原因を知る事
※この事例は、技法の活用法をわかりやすく説明するための、架空の話です※
郊外の駅から少し歩いたところにある個人経営のカレー屋さんは、この所赤字が続いていました。
赤字脱却のために業務改善したいと考えていましたが、何から着手していいかわかりません。
とにかく困っているのは「儲からない」事です。
そこで、儲からない原因を分析してみようと、特性要因分析で原因を探ることにしました。
「設け」とは、利益、即ち売上-費用ですから、「売上」と「費用」の視点それぞれで、原因を分類してみました。
その結果、まずは抑えられる費用を削る方が手っ取り早そうなので、具体的なコストダウン方法を探ってみることにしました。
コストダウン対象を絞り込む
先月までの費用の情報を会計ソフトから出力し、Excelで大きい順に並べてみました。すると、「人件費」「材料費」「家賃」「光熱費」「通信費」・・・の順にコストがかかっている事が分かりました。
人件費は自分とパートさんの給料ですから、今すぐ削りたくありません(最後の手段です)。
家賃もすぐに削ることはできません。
光熱費以下は、仮に半額にしたところでさほど影響がないこともおあり、材料費を集中的に分析する対象とします。
その対策は効果がある?
使える費用を増やし、肉の仕入先を変えて仕入単価を下げれば、肉の量は増やせそうです。
しかし肉の量だけでそんなに変わるものだろうか?と不安に思い、シミュレーションしてみることにしました。
期間限定で「肉増量キャンペーン」を行うことに決め、10%~35%増を5%刻みとし、実施期間を変えて試してみると、一番食べ残しがなくお客様の満足度も高いのは現状から20%増の時であることがわかりました。
また、30%以上の増量時はランチタイムに近くの会社に勤める若い男性客が増える傾向がありました。
もう一つの対策
せっかく肉の量を増やすのですから、もう一つ口コミで目立っていた「コクがない」という意見にも対策を取りたいところです。
カレーのコクは隠し味を入れるほかに、じっくり弱火で煮込むことで素材のうまみを出すことも大切です。
じっくり煮込む時間を反映させた手順を業務体系分析図にすることで、まずは調理の全体像を把握します。
時間の使い方を効率化
完成した業務体系分析図を元に、PERT/Time技法を使って、並行して行える仕込みや、作業の空き時間がどれくらいあるかを視覚化しました。
煮込む時間が長くなることで、仕込み時の空き時間がずいぶん増えたことに気づき、その間に仕込めるサイドメニューやトッピングは無いかを考えることにしました。
メニューの見直しは大成功!?
新しいカレーはコクが増して、お肉も増えたとお客さんの評判も上々。
若い男性客用に「肉増量」オプションを加えたほかに、新しく始めたサイドメニューやトッピングで、全体の客単価も上がってきました。
やっと赤字経営から脱出できそう!と大喜びですが、仕込み時間が長くなり、カレー以外にも仕込むメニューが増えたことで疲労が溜まってきました。
そこで、仕込み時間の短縮ができるところはないだろうか?と見直すために、パレート分析を行いました。
時間のかかるタスクの上位を占めるものに効果のありそうな調理器具の導入等の改善を行うことで、十分な売り上げを確保しながら、自分が休む時間も得られるようになりました。
お客様から「デザートも欲しい」という声が出ているので、次の休日はデザートメニューの研究もいいなと思っています。